2006-01-01から1年間の記事一覧

80年後のレモン〜阿部和重『ミステリアスセッティング』

これは現代版『檸檬』だな、というのが読後の感想です。 梶井基次郎の『檸檬』において主人公は、落第を繰り返した末、当時の「知」の中心であった丸善を、レモンを爆弾に見立てて爆破する妄想を抱きます。 阿部和重の『ミステリアスセッティング』は、人に…

明日は「待っている」か

今朝の鳥越さんの朝日の記事を読んで感じる違和感を一言で言えば、明日が「待っている」という考えは、もう通用しないのではないか、ということだ。 〈いじめられている君〉は、今ある社会で〈いじめられている〉のに、その社会の中で「希望」を見つけろとい…

ワーキングプア2といじめ

最近朝日新聞の朝刊に、「いじめられている君へ」なるタイトルで、「いじめられている君へ」の「励まし」のメッセージが掲載されている。そこでの論調としては、おもに「希望」をといていることが多い。いわく。 「今はつらいかもしれないけど、きっと希望は…

酒と煙草

タバコを吸わないといっても、とくに喫煙者から「変な奴」だと思われることはないが、酒を飲まないというと、明らかに「変人」扱いされるのは、どうしたわけだろうか? 就職活動中に、いくつかの会社で喫煙習慣が無いことを条件とするところがあった。私自身…

『サモアンサマーの悪夢』小林信彦、新潮文庫 『テレビの黄金時代』小林信彦、文春文庫 『今夜も落語で眠りたい!』中野翠、文春新書

デジカメおばさんの怪

竜巻の映像は、見るだに痛ましい限りだ。 実際のその被害にあった人々の恐怖たるや、想像を絶する。 早急な復興を願うばかりだ。 ところで、被害者の姿を映し出した報道の中で、気になることがあった。 たぶん竜巻に関するものであったはずだが、デジカメを…

買い物

ブックオフでの買い物・105円 『恋するように旅をして』角田光代、講談社 『侵入者』小林信彦、文春文庫 『レストレス・ドリーム』笙野頼子、河出文庫 『あの人と和解する』集英社新書 『勉強法が変わる本』市川伸一、岩波ジュニア 『質問力』斉藤孝、筑摩…

買い物

ブックオフの105円コーナーでの、本日のお買い物。 『放送禁止歌』森達也著、光文社 『驚異の百科辞典男』AJ・ジェイコブズ 『第一阿房列車』内田百輭、新潮社 『失敗学のすすめ』畑村洋太郎、講談社 『20世紀を見抜いた男 マックスウェーバー物語』長部…

「家政婦」として生きる

友達の妹がZ会の通信添削をやっていて、英語の問題を見せてもらったら、こんな風なことが書いてあった。 今後、富を求めて「豊かな」日本にたくさんの移民がやってくるだろう。その移民たちを、共働きの日本人達は「家政婦」のようなものとして雇うようにな…

価値観の一元化は是か非か

トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』から再び。アメリカへの留学生はインド人が一番多く、その次に中国人だそうだ。彼らにははっきりしているのだろう。 「人生」を生きるとは、英語を学び、IT技術を身につけ、経済的に成功する これこそが国民的…

うーん。つらい。 とにかく「のほほん」とここまで生きてきた私にとって、自分の受けてきた「教育」なるものが、全て無駄だったのではないかと思えるほどだ。英語もできなければ、コンピュータを上手に扱う技術も無い。おまけに、誰かと競争するなんていうの…

頑固な老人

今外で、85歳になる祖父が草むしりをしている。 こんなこと書いている暇があったら、早く手伝いにいくのが正しいのだろう。 しかし、朝からやる気満々であった祖父に、私はこう言ったのだ。「朝はすずしいからその間に勉強して、その後おれがやるよ」と。祖…

講演会の開始日時

神奈川県の二宮町で、企業セミナーのようなものがあった。 行きたい気持ちはあった。が、いけなかった。というより、行く気をなくしたというのが正確だろう。というのも、なんとこの講演会、PM1:00から開始なのである。 ふざけてる。そう思った。 なぜな…

受験術にたいする疑問

来春から、さる受験予備校に入社する。 そのために、今から色んな「受験術」に関する本を読んでいるのだが、 そこで気になることがある。 三浦しおんの『三四郎はそれから門を出た』の中で、『海辺のカフカ』について述べた文章がある。 そこで三浦は、「15…

「老人」の定義、および「老人」的な生活について

ひとはいつ「老人」になるのだろう? 父方の祖父、両親、それと私の四人が、一つ屋根の下で暮らしている。両親は働きに出ていて、平日の昼間家にいることはない。一方私は大学4年生で、かつ卒論もほぼ書き終わり、単位も全てとってしまっているので、必然的に…

カズオイシグロの「つらさ」

カズオイシグロの『私を放さないで』が、もう絶賛絶賛の嵐である。この作品をけなしたら、それこそ書評家生命終わりと言っていいぐらい、あらゆるところで褒め称えられている。 しかし、である。 私はいつもの「つらさ」を感じることを禁じえなかった。 その…

サービスについて

田崎真也『サービスの極意』を読む。 「気配り」が「意外に自分本位であることが少なくない」という指摘には、ハッとさせられる。 例えば家族の食事を作っていて時々、 せっかく温かいものをだしているのに、どうしてすぐに食べないんだろう、 と思うことが…

要約について

本を読んで、要約することの効用はつとに言われているが、 さて、では要約の問題点はなんだろう。 私の要約の定義は、 「自分が理解できることのみを選択的につぎはぎした、独りよがりの文章」というものだ。 もちろん、このように書くと、なにやら「要約」…

「分からない」ことに快楽を見出す生徒達

最近家庭教師を始めて、その生徒がしきりに「分からない、分からない」と嘆いている。「周りの期待に応えられないのがつらい」と訴える。 ここで思うのだが、その生徒は、実は「分からない」ほうが、自分にとって都合が良いのではないか、ということだ。 「…

「他者」への想像力

加藤典洋が、「他者への想像力」が欠けているとして小説を批判しているのだが、 果たしてそれは、妥当な批判だったのか? 普通に考えて、西村賢太や小谷野敦の小説が「他者への想像力」を欠いているからと言って、 それが直ちに作者本人の「他者への想像力」…

準ひきこもり

私の居場所が、大学から消えていく。 それまで、無口で変な奴、ぐらいに思われていた人間が、 「準ひきこもり」というレッテルを貼られて、「異常な奴」としてみなされることになる。 これまでの「準ひきこもり」予備軍たちは、自分を何かしら変だとは自覚し…

「分かりやすく」書くこと②

「分かりやすく」書くことの問題をいままで考えてきたのであるが、 自分でも誤解してきた節があるので、ここでひとつこの問題の前提を問い直しておこう。 1.「分かりやすい」表現とは、「分かりにくい」表現を易しく言い換えたものなのか? そうではないだ…

muffdivingさんの文章へのささやかな回答

以下で色々と書かれている。 http://d.hatena.ne.jp/muffdiving/20060711/1152624584 私に関する箇所は、いちいち「もっともだ」と思うと同時に、でもなんだか分からないところもあるので、ここで疑問・反論を述べておきたい。 1.「こういうバカが多くなっ…

読者とは誰か?

小森陽一『心脳コントロール社会』を読む。おもしろいのだが、こういう本を読んでいつも感じるのは、こうしたことだ。 1.大衆メディア(新書)を使って、大衆メディア(テレビ)を批判するのはどうなのか? 2.「騙されるな」というが、それでは「騙され…

同じ書物に名前が掲載されるとは?

「宮台さんの文章を理由にジェンダー系の学問に問題があるみたいにいわれるのは困ります。」とおっしゃいますが、私はそんなこというつもりはありません。私が言いたいのは、『バックラッシュ!』という雑誌の趣旨に賛同し、キャンペーンブログまで熱心に運…

「分かりやすく」書くこと/小谷野敦が孤立する理由

NHKよ。いったいどうしたんだ。昨日の爆笑問題の番組で、ところどころに差し挟まれた、あの猿の(意味不明でなんの面白みもない)映像は何なんだ?NHKは、自分が猿だということを暴露したかったのか?まぁ、それは措いといて…。太田光が、「分かりにく…

バックラッシュ

小谷野敦の『バックラッシュ!』批判について。 小谷野敦、どうやら孤立しているようだ。 「なにいちゃもんつけてんだ?」 そんな感じである。 しかし、私は小谷野の議論はやはり重要だと思う。 それは、結局『バックラッシュ』に関する議論が、 人文科学系…

池田雄一『カントの哲学』

池田雄一『カントの哲学』からの引用。 …そうなると、くだらない些細な出来事からドミノ式にというか雪崩式に、 十二人死亡、三千七百九十四人が重軽傷という大規模なテロ事件に至った ということになる。 おそらくオウム真理教団による一連の事件がおぞまし…

リアルワールド

母親を殺し、逃げ回る少年に対し、テラウチはこう思う。 わたしはユウザンやキラリンたちがなぜあんなに興奮しているのか測りかねている。ミミズ なんか早く捕まって、あの中年女のカウンセラーだの、精神分析医だのに、毎日同じ質問さ れればいいのだ。他人…

「健康」について

「健康」であることは、果たしていいことか? 私は菜食主義者である。 肉を食べる人間、脂っこいものを食べる人間を、たぶん軽蔑している。 太ってもいないし、病気もしないし、健康そのものである。 自分のものは自分で作って、自分で食べたいものだけを食…