準ひきこもり

 私の居場所が、大学から消えていく。

 それまで、無口で変な奴、ぐらいに思われていた人間が、
準ひきこもり」というレッテルを貼られて、「異常な奴」としてみなされることになる。
これまでの「準ひきこもり」予備軍たちは、自分を何かしら変だとは自覚しつつも、
大学生活という、他人とほとんど関わりを持たないで生きいける環境の中で、
他人に何とも思われていない、という心地よさの中にいた。

 ところがこれからは、他人と関わることができない無口な奴は、
他人から「準ひきこもり」であるとみなされているという意識をもちながら、
大学生活を送らざるを得なくなる。

 これはキツイ。なぜなら、
今までの準ひきこもり君たちは、「変」だとは思われていても、
社会から阻害され、排除されるような人間だとは、自分を認識してこなかったのだから。
そして、周りの人間も、そいつを「変」だとは思っていても、
社会的に「異常」な奴にカテゴライズする便利な概念がなかったため、
無視するしかなかった。

 しかし彼らは武器を手に入れた。
自分達には理解できない「お勉強好き」の「社交性のない」「孤高者をきどった」あいつを、
準ひきこもり」として分類し、社会の落伍者として認識できるのだから。