You've got a friend
NINE DIRTS AND SNOW WHITE FLICKERS [DVD]
- アーティスト: 鬼束ちひろ
- 出版社/メーカー: UNIVERSAL SIGMA(P)(D)
- 発売日: 2008/08/06
- メディア: DVD
- 購入: 3人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (25件) を見る
鬼束ちひろの歌う「You've got a friend」と、
絢香が歌う「You've got a friend」を聴き比べてみる。
するとそこに、この二人の決定的な違いを聴きとることができる。
絢香は、確かに歌うのがうまい。
声の響き、テクニック、どれをとっても、鬼束ちひろはかなうまいと思う。
それでは、絢香の歌が、心に響くかといえば、そうではない。
「あぁ、上手だな」と心底感動させられるが、それ以上ぐっとくるものがない。
対して鬼束ちひろの歌は、心にぐっとくる。
DVDを見ていても、表情が既に神がかっている。
やさしく語りかけるような、諭すような。
決して大声を張り上げて盛り上げたり、技巧をこらすではなく、
そっと語りかけてくる。
この「You've got a friend」に関しては、それが正しい気がする。
もちろん、これは自分の意見であって、鬼束ちひろという歌手を私が
愛しているから、ということもあるだろう。
これを見ると、とても痛々しい。
しかし、ファンはこの痛みを共有することでしか、
鬼束ちひろには近づけない。
最近の鬼束ちひろは、ファンを寄せ付けない強さを身につけたと思う。
雑誌のインタビューを読んでいても、「理解」を要求しているとは、まるで思えない。
「理解などは、誤解の総体にすぎない」と言われるが、
所詮理解してもらえないなら、最初から理解してもらおうなどという無駄な努力は一切せず、自分の気持ちの赴くままに生きていこうという意志が感じられる。
その変化は、時としてファンを脅かす。
彼女はその意味で、「帰り路をなくし」たのだ。
衝撃の復活、後のコンサート中止。
「帰り路」を探しに来たはずが、そんなものは無いのだと知った時の絶望。
それでも生きていかなければならないとは、なんて過酷なのだろう。
彼女は若すぎた。
年齢なんて関係ない、と人は言うかもしれません。
しかし、年相応という言葉があるように、人は、その年代には知ってはいけない世界、というものがあるはずです。
その世界の重みに耐えきれず、つぶされてしまうこともあるでしょう。
鬼は、歌の魔力にトリツカレ、今日も歌い続ける。