sign = sing
signという単語は、語順を入れ替えると、singになる。
「徴候」と「音楽」。
彼女の「音楽」に生じた、ある「徴候」を見逃せません。
- アーティスト: 鬼束ちひろ,羽毛田丈史
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2003/05/21
- メディア: CD
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ジャケットのカバー写真に写った彼女の顔。
かつてない穏やかさに満ちています。
その「顔」に相応しい、穏やかな音楽。
しかるに、
歌詞の内容自体は、穏やかさとはおよそ無縁であり、
「世界は笑ってくれるだろうか?」と、
自分が「笑われる存在であること」を承認した、
ある種「道化」の感覚を持っており、
自分自身の「特殊性」を、軽い絶望をもって肯定しているように、
当時は感じられました。
「仕事」や「義務」とはおよそ無縁な、
「自分」という重責に堪えきれなくなったとき、
私たちは、一体どうすればよいのだろう?
それを「幼さ」と名付けてしまえば、
「大人になれよ」の一言ですませてしまえるのだけれど、
そうではない切実さを感じるからこそ、
鬼束ちひろの音楽が、必要とされているのでしょう。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06/27
- メディア: 単行本
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桐野夏生の作品が、明らかに変化したのは、『グロテスク』からでした。
手紙を通じて語りかけるような文体は、「文字にする」という理性の裏に、
狂気が宿っていることを如実に伝えていました。
理性の内側に潜む狂気。
狂人が理性的に文章をつづるという矛盾。
それを、矛盾と感じさせない迫力を気力を持って、桐野夏生は、
『グロテスク』という大作を、書き上げました。
二人の巨匠は、今現在、私にとって、
最高の「ブンガク」を提供してくれています。