精霊の声を聴く

鬼束ちひろのステージを見て、

「もうこれでおしまいなんだな」と思った。

それぐらい彼女は、1回のステージに、自分の全存在を賭けている。


体重がみるみる減少し、どう考えても病気としか思えない状態に

陥りながら、なぜ鬼束ちひろは、全身全霊を賭けて歌うのか?


それは、彼女にとってそれが、「生きる」ということの別名だからだ。

歌うこと以外、彼女の存在価値はない。


高校卒業後、社会に出てあっという間にスターになった彼女にとって、

社会とは、歌うことで受け入れられるものである。

歌うことを失ったら、彼女は「社会」からつまはじきにされてしまう。


いかにステージ上で狂気を発し、常人離れしているとはいえ、

まだまだ若い。

そんな彼女が、社会に出てぶつかった壁。

それはあまりも強固で、高い。