声の誘惑

廃墟が美しく描かれるのは、何も珍しいことではない。

全てが失われゆく場所というのは、同時に、

何ものかが生まれ来る場所でもあり、

そこには、「死と再生」の場所でもあるからだ。


鬼束ちひろのステージを見ていると、そのことを思う。

彼女は、ステージの上で、ステージに立つ度に、

死と再生の儀式を繰り返している。


その身体から発せられる詩声は、破壊し尽くそうという衝動とともに、

妙な安心感を持って、、私の身体と共鳴する。