文化系トークラジオ Life IN 早稲田

 その学生の50%がフリーターになると言われる早稲田大学第一文学部を卒業し、

社会人一年目をもうじき終えようとしている自分から、文化系学生に伝えらえる

ことがあるとすれば、黒幕 長谷川氏のように、新入社員歓迎会において、

カラオケの環に加われず、拳を握りしめてうずくまっていようが、

働くなんて、思想や文学という高級なことに比べて、もっとずっと卑小で

低劣なことだと考えていようが、なんとかやっていけるんだということだ。


 もちろん、正直に告白すれば、何度辞めようと思ったか分からない。

事実、一度職場から逃げ出し、社内的には完全に補されてる状況で、

地方に飛ばされ、今こうして一人暮らしする羽目になっていたりする。

 それでも自分がこうして会社につとめていられるのはなぜなのか?

以下の発言は大いに反発を喰らいそうだが、思い切って言わせてもらえば、

どんな状況に陥ろうと、自分は他人より思想や文学について深く考えてきて、

どう考えたって他人より「アタマがいい」と勘違いしてきたからだった。

 周囲の人間から見れば、かなり鼻持ちならない人間で、実際同期で友達

と呼べる人間なんて一人もいないが、それでも、適当に話を合わせながら、

「自分は自分が正しいと思ったことをずっとやっていくんだ」と、会社に

とってはどう考えても迷惑きわまりない信条を持って、仕事に打ち込んでいる。


 文化系学生で来春から会社員になる皆さん。

出世なんてあきらめなさい。

 ぼくは、職場から逃げ出して地方に飛ばされたときに、

周りから評価されるよう自分を作り上げなければならない、という呪縛から

解き放たれた。

 それ以来なぜか、周囲から評価されるという逆説を味わっている。

就職活動では、むりやり意味の分からないテンションを要求され、

その要求にそった自分を作り上げて、「こんな自分は、本当の自分じゃない」

などと、苦悩したことがあるはずだ。

 だが心配するな。

 人はなれる。

 むしろ、私生活では「本当の自分」を守って、

職場では「本当の自分じゃない」自分を演じきってみせるのも、

ポストモダン社会である日本において、

意外におもしろい試みであると、私は考えている。