石原先生新刊
- 作者: 石原千秋
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/12/13
- メディア: 新書
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石原先生の書物の一貫したテーマは、いかに自分が生きている時代を
相対化して眺めるか、ということだと考えている。
今回の『謎とき村上春樹』でも、そのテーマは引き継がれている。
- 作者: 石原千秋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/03/16
- メディア: 新書
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「百年前」の男と女。
その姿を明治時代の雑書から読み取り、現代の私たちの姿と重ね合わせて論じた書物。
この本を読んで身につまされた思いを抱く人も多いだろう。
陰謀論や占いがはやるのは、世界・人生がいかなる原理原則によって
成り立っているのかを知りたい欲望から来ているのだとすると、
「百年前」も「現代」も、男と女は「ほとんど同じ」生活を送っていることを
暴いたこの書物は、「歴史は繰り返す」という言葉の通り、
ほとんど冗談にしか思えない今の私の生活が、
「冗談」などではさらさらなく、
「百年」も前に生きられていたことが分かり、
自分こそ「特殊」で「劇的」な人生を生きていると「錯覚」
している我が身を振り返るいいきっかけになった。
石原先生の新刊が、『謎とき村上春樹』であることに注意しよう。
村上春樹の謎をとく、それは、村上春樹が「世界性を獲得している」
「この時代」=「いま」を読み解くことに他ならない。
なぜ「みんなは村上春樹が大好き」なのか?
それを読み解く鍵の一つが、例えば「ホモソーシャル」という概念であり、
「自己神話化」という概念である。
藤原紀香の結婚があれほど話題になったのは、
日本がいかに「ホモソーシャル」な社会であるかを表している。
また、リストカットがこれほど「流行る」日本という社会は、
その都度「殺している」自分という存在が回帰する瞬間を味わうことが、
当人のアイデンティティーとなっていることを表している。
自分の生きる時代が、いかなる「思想」下にあるかを知ったからと言って、
それがどうしたといわれれば、こう答えよう。
知らないことを、知らないままでいるより、
「知った」上で、それを選択するかしないかを決断する知性こそが、
今求められているのだ、と。