科学は詩的言語の夢をみるか?
- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/05/18
- メディア: 新書
- 購入: 56人 クリック: 1,487回
- この商品を含むブログ (1107件) を見る
○
生物と無生物の起源が、一遍の詩を紡ぎだすように、
語られていく。
○
科学や数学史に残る大発見を、そこで戦った学者の群像劇として
描く書物や映像は無数にあると記憶する。学者に自分を重ね合わせ、
いつか自分も同じような大発見をしてみたいと、胸を躍らせ、
食い入るように物語の世界に没入したひとも、少なくないはずだ。
○
きのう購入した福岡伸一先生の本も、そんな科学者の発見を扱った
書物のひとつに数えることができる。まだはじめの所しか読んでいない
ので、はっきりしたことは言えないのだけれど。
この本の特異な点は、科学者の業績とともに、その科学者が過ごした「場所」
が書き込まれている点である。おそらく、著者自身が外国で過ごした、
その生々しい体験が反映されているからである。
○
著者が経験した外国滞在の「思い出は」、日本に帰って来てからの生活の
なかで、ゆっくりゆっくり著者自身の中で醸成され、まさに「食べ頃」になって
取り出された。そんな気分を、本書の冒頭からは味わうことができる。
その「味わい」を一言でいえば、「詩」になっているということだ。
科学史上に燦然と輝く発見が、著者が過ごした思い出深い「場所」で発見される。
その「場」には、著者の思い出がぎっしりと詰まっている。
○
思い出は、物語を「詩」に変える。
時として、そのような「美学」を嫌がる人も、いるかもしれない。
ただ、そんな「詩」に酔える快楽というのもまた、書物を読む上で、
大切な経験のひとつではないかと思うのだ。