大人は分かってくれない

①聞く

 営業における大切な資質として、人の話を「聞く」点が強調される。

 私が会社に就職してからこの約1ヶ月、繰り返し聞かされてきた話だ。

 なぜ「聞く」ことが大切なのかといえば、人はなんだかんだいって自分のことを

 話したいのだから、気持ちよく相手に話をさせてあげることで、信頼関係を

 築き、こころを開かせることができる、というわけだ。

 いざ現場に出てみると、これが案外難しい。

 どうしても、「意見」や「アドバイス」をしたくなってしまう。

 相手の話をじっくり聞いているつもりが、いつのまにか口を挟んでいることに

 気づくことがよくある。


 そんな時、「はっ、しまった」と思うことになるわけだが、そうなったらもう、

 時既に遅し。相手の心を開かせるどころか、自分が話せたことで満足して話が

 終わってしまっているなんてことは、しょっちゅうである。

 ところでこの「聞く」という資質についてだが、確かに営業という現場においては

大切なのだろうが、こと私に限っては、大人がこんな「狡猾な」トークスキルを

身につけていたら、ちょっと「かなわんな」と思う。

 最近会社の同僚と話をしていて、私が昔いじめにあって苦しんでいたのだけれど、

周りの大人は全然それに気づいていなかったといったら、「大人って何にも分かって

くれないって、なんか絶望的ならなかった?」と言われ、なんか違う、と思った。

その「なんか違う」という感じを一言で言うと、むしろ私は分かってくれなかった

ことに感謝していた。親になんて特に、絶対に知って欲しくなんてなかった。

 このように屈折した思いを同僚に「告白」したところ、分かったような分からないような、

何とも煮え切らない態度を示していた。結局彼女も、「分からなかった」のである。