『ウェブ人間論』を読む
- 作者: 梅田望夫,平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/14
- メディア: 新書
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『ウェブ人間論』を読んだ。
二人の対立点で興味深かったのは、
梅田が、ネットを《個がサヴァイブするためのツール》として捉えているのに対し、
平野は、《個が社会に対してもっと開いてないといけない》と述べている点である。
これは結構大切だと思うので、少し掘り下げて考えていきたい。
先ず、ネットが《サヴァイブするためのツール》足りうるとして、
しかし一方で、ネットにつながる環境にない膨大な貧困層が、現に存在している事実がある。
もちろん、自分の生活すら満足に築けないのに、他人のことなんか考えてもしょうがないじゃん
という考えはあると思うけれど、ある程度の生活が保障されている現在の日本において、
内面的な孤独感を癒すためにネットの世界に充足してしまうのは、ちょっと傲慢かな、という気がする。
次に、《個がサヴァイブ》っていうけど、既にサヴァイブし損なったと感じている、
つまり、リアル世界での人生において決定的に敗北感を抱いてしまっている人たちを
どうするのかという問題があると思う。
ここで平野が、政治や社会の問題を持ち出してくるのは当然で、
つまり、リアル世界での絶望感を、ナショナリズムなどの形で組織化しようという運動が、
今の日本の閉塞感を形作っている気がするのだ。