文科系トークラジオ「life」感想

 TBS「life」というラジオ番組の昨週のテーマは、《Lost Generation》だった。《Lost Generation》と名付けれられることで、失われたことにされたのは何なのか。
 私はそれを、「歴史」だったのではないかと思います。

 「美しい国」が志向されているということは、現在の日本が「美しくない」ということであり、その「美しくない」日本を作った元凶こそ、「失われた90年代」である。こういわれている気がします。というのも、「美しい国」を作るために参照される「歴史」が、『Always3丁目』で描かれるような美化された昭和の姿であったり、『』で活写される高度経済成長を担った企業戦士の姿であったり、明らかに90年代の文化や時代背景が無視されているように感じるからです。

 ここには、90年代を振り返ることをさせず、「美しい日本」に都合の良い「歴史」へと一足飛びに「国民」を統合しようと言う意図が透けて見えます。本当なら、私たちが生きてきた80年代から90年代こそが、検証すべき歴史であるはずなのに、「そんなものは忘れて、もっと良い時代があったんだから、それさえ知っとけばいいんだ」と言われているようで、何だか気持ち悪いです。

 「そんな事忘れちゃえよ」ということは、自分の間違いを「なかったこと」にしようという態度と相即てきです。90年代を主たる考察対象にしてしまえば、自分達の過ちをも同時に検証することも意味します。そうすると、「美しい国」なんて叫んでる当の本人達こそが、まさしく「美しくない国」を作ってしまったことが明白となってしまうばかりに、「忘れちゃってくれたほうが都合がいいぜ」なのだと思います。

 『life』という番組が興味深いのは、この「失われた」ことにされそうな90年代の「歴史」を構築しようという熱気にあるのではないでしょうか?私自身、自分が青春時代をすごしてきたはずの90年代に無知であることに、この番組を聴いていて気づかされています。

 自分の生きてきた歴史を振り返ることもせずに、「美しい国」の「歴史」に飛びつくことだけはやめよう!《Lost Generation》よりはやや下の世代に属する私ですが、そんなことを考えさせられた番組でした。