大人にはわからない日本文学史
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<「僕」が振り返って見てしまった「見てはいけないもの」とはなんでしょうか。
それは、ことばで直視してはならないもの、近代文学の大ざっぱなことばでも、それを否定した現代文学の「モノとしてのことば」でも、あるいは、その先に生まれた「玩具としてのことば」でも届かないなにかです。
しかしまた同時に、それがなにかを知るためには、それを「見る」ためには、ことばが必要であることを、「僕」は知っているのです。そのために、「僕」は、罠のように、自分に無理矢理「ことば」を発させようとする、あらゆる試みから逃れるため、「魔王」と戦い、パスタをゆで続けるのです。
しかし、「魔王」はいつか倒され、パスタはすべてゆで上がります。やがて、「僕」には、見てはいけないそのなにかを、見なければならない瞬間がやってくるでしょう。その時に、どんなことばを発するべきなのでしょう。そのことばを見つけるために、「僕」は、この瞬間、いま、「棒立ち」になっているような気がするのです。146p>
「見たくない現実」から目をそらすため、ひたすら目の前の作業に熱中したり、他の事で気を紛らわせたりするのだが、「それ」は、いつ、何時、よみがえってくるのか、分からない。