乾くるみ著『イニシエーションラブ』

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

「噂に違わぬ大傑作「!」」

読んで楽しめることは間違いない。

人によって読みどころは違うだろうけれど、

初読時の読みどころと、再読時の読みどころ、というカタチで、

分けて伝えていきたい。<初読時の読みどころ>

なんといっても、初めは「野暮」で「ださださ」な<たっちゃん>が、

SIDE-Bに入ると、急に優秀なサラリーマンへと変貌するあたり。


ものすごい違和感だった。

「あれ?こんなに<たっちゃん>って「できる」人だったの?」

ともあれ、<たっちゃん>は、その優秀ぶりを存分に発揮し、

絶世の美女をたらし込み、地元に置いてきた女を捨てることになる。


なんだか、村上春樹の小説のように、主人公がやたらともてるのも

気になった点である。

「こんなことあるわけないじゃん」

合コンに一度も参加したことがないような<たっちゃん>が、あんなに

女性に言い寄られるなんて、まさかねぇ。<再読時の読みどころ>

そりゃあもう、<まゆちゃん>の悪女っぷりを堪能するしかないでしょ。

それと、東京にいる<鈴木辰也>のばかっぷり。<辰也>は東京で女をつくり、その事で良心の呵責を感じたりして、

もんもんと悩むのだが、地元に残された<まゆちゃん>もまた、男をつくり、

うぶな女性を演じる。


分からないのは、<まゆちゃん>の友達3人は、<まゆちゃん>に恋人がいて、

それにも関わらず<鈴木夕樹=たっちゃん>に言い寄っていたことを、

知っていたのかどうかだ。


さらに言えば、もう僕自身には、<まゆちゃん>の真意が分からない。

「<まゆちゃん>どんだけ図太い神経してんだ?」

妊娠して堕胎していながら、けろっと<鈴木夕樹>と付き合ったり、

堕胎した直後の体で<夕樹>とSEXしておいて、それがあたかも、

初めてだから痛いようなふりをして見せたり・・・。


怖い小説です。ミステリーと言うより、ホラーです。