MAGICAL WORLD

鬼束ちひろ


<人のように振る舞えなくて 泣いていた>


「人のように振る舞え」ずに「泣く」ということは、

鬼束ちひろという人物が、「人のように振る舞う」ことへの希望を、

捨てきっていないことへの証明だろう。

しかし、彼女はこうも言っている。


<まっすぐに思うことは なぜ寂しいの?>


何が寂しいというのか?

「大人になる」ということは、<まっすぐに思うこと>を受け入れる、ということであり、

言ってしまえば、社会の一員になる、ということである。



「まっすぐ」に思わなくていいというのは、

「反抗する若者」の特権である。

その特権を放棄して、社会に入り、

労働することこそが、「まっすぐに思う」ことのメタファーであり、

それを拒否する限り、彼女は大人になりきれない。


もちろん、彼女を大人にすることが、いいことかどうかの判断は、

私としてはつきかねるのだが、それは、ファンの皆様の判断にゆだねる

として、私は今日も、鬼束ちひろを聴き続ける。