『異邦人』は不条理か?

 『異邦人』の主人公ムルソーは、殺人の理由を聞かれ、

「太陽のせい」だと答えた。これをもって通常は、この小説が「不条理だ」と語ら

れたりもするのだがどうだろう?

 夜な夜な同期入社の友人と、こんなに毎日つらいのに、どうして私たちは生き続

けるのだろうね、などと語っている私としては、

例えば次の日が休みだったりすると、強く照りつける太陽の下で「元気で」

「明るく」働いていたり活動している人間を観ると、正直つらい気持ちになる。

もちろん、そうした人たちがいるからこそ自分の生活が維持できているのは確か

なのだが、太陽の下で前向きに日常を生きている人を見ると、自分とは全く

違う世界を生きているように感じてしまう。

 なんだか「中2病」のようなメンタリティーだが、ムルソーも同じ

気持ちだったろう。太陽の下でより、月の下でしか語り得ないことがあり、

そうした感情を共有できる人間というのは、とても稀少なのだ。

異邦人 (新潮文庫)

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