高校生の勉強法
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: ナガセ
- 発売日: 2002/04/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まず前提と知っておかなければならないことは、
中学生から高校生になる頃に、脳の性質が変化するということです。
具体的には、中学生までは丸暗記が得意なんだけれど、
高校生になると論理立てた理解をしないといけなくなるのです。
それでは、始めましょう。
1.短期記憶と長期記憶
知識・情報は脳に、どのように保存されるのか?
まず、知識・情報は、≪海馬≫という部位に、一時的に蓄えられます。
この地点での潜伏期間は、1ヶ月です。1ヶ月たっても海馬が「これは
大切な情報である」と判断しなければ、不必要な情報として廃棄されます。
では、海馬が「これは大切だ」と判断した情報はどうなるのか?
これは、大脳皮質という長期記憶を司る部位に保存されることになります。
こうして初めて、きちんと「記憶した」といえるのです。
Q.海馬が「大切だ」と判断する基準はあるんですか?
A.あります。それは、「生きるのに必要かどうか」です。
「生きるのに必要かどうか」というと、「受験の知識なんか生きるのに
必要ないんじゃないの?」という疑問があがりそうです。その通りです。
だから、脳を騙してやる必要があります。
具体的には、繰り返し繰り返し、何度も何度も脳に情報を送ることで、
「こんなに何度も送られてくるんだから、大切な情報に違いない!」
と脳に勘違いさせましょう。
「忘れる速度」は、人によって異なると思われがちですが、
実は個人差はありません。暗記した直後がもっとも忘れやすく、
時間がたつにつれて忘れる量は少なくなってきます。
これは実感としても諒解できるのではないでしょうか?
印象的なことはいつまでも覚えているけれど、それ以外の些末なことは
終わった瞬間忘れてしまうなんてこと、あるんじゃないでしょうか?
Q.効率的な暗記方法はあるの?
A.①適切な時期に、②同一内容(同一対象)を復習することです。
まず適切な時期、学習した翌日に1回目
1回目の復習から1週間後に2回目
2回目の復習から2週間後に3回目
3回目の復習から1ヶ月後に4回目
この間隔を守って、同一内容(対象)を繰り返し復習しましょう。
つい他の参考書などに手を出してしまいがちですが、復習の効果が
もっとも顕著に表れるのは、同じものを繰り返し繰り返し復習すること。
3.睡眠学習→夢は記憶の再生
睡眠は、記憶の整理・整頓に不可欠です。
①その日仕入れた知識・情報を整理・整頓する。(新−新)の関係。
②過去の記憶と、新しく組み合わせ、新たな結合を生み出す。
【(新−新)−古】の関係。
4.LTP=長期増強という現象
この現象は、神経細胞を繰り返し刺激(=復習)することで、
神経細胞の結合を強化することです。記憶は、「あらたな神経回路の形成」
と簡単に定義することができますが、この定義をしっていれば、
「神経細胞の結合強化」とは、「記憶の強化」の言い換えであることが
分かります。
Q.繰り返し刺激しろって言うけど、回数を少なくする方法はあるの?
A.2つあります。
①「シータ波」(=好奇心)を出すことです。
わくわく、どきどき、興味を持って対象に接することです。
子供のように、新鮮味を失わないようにしましょう。
②「扁桃体」(=感情を司る)を刺激する
喜び、悲しみ、怒りなどの感情を利用しましょう。
例えば、テスト(試験)への不安・緊張が、扁桃体を活性化させ、
記憶を助けてくれることがあります。
しかし、過度の緊張や不安は、脳へのストレスを高め、
記憶の障害になりかねません。
≪マンネリ化せず適度な緊張感を保ちながら、LTPを起こす
シータ波(興味)と扁桃体(感情)という2つの秘訣を適切に
活用≫するように心がけましょう。
脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)
- 作者: 築山節
- 出版社/メーカー: NHK出版
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以前にも紹介した上記の書物。
ここでは、「常に試験を受けている状態」を推奨していました。
いきなり「どかん」と重たい課題を処理することは、長期的にみると
とても負担が大きい。だから、低いハードルを着実に一歩一歩越える
よう普段から心がけていれば、負担は少なくてすみます。
5.1つの分野に習熟する
人によって、好きな分野と嫌いな分野があると思います。
思い切って、好きな分野を徹底的に極めてみましょう。
1つの分野に習熟することの最大の利点は、
その分野の知識・理解を深めることではなく、
知識を「理解する方法」「習得する方法」もまた、
同時に(無意識のうちに)獲得しているということです。
この知識を「理解する方法」「習得する方法」は、
誰かに教わるものではなく、自分で身につけなければならないのです。
そして、「学習の転移」という現象によって、その「方法」は、
他の分野を理解するとにも無意識のうちに応用されます。
勉強をする意味は、まさにこの点にあります。
これから先、大学や社会で「学ば」なければならない機会は無数に
あります。そのとき、高校生のうちにきちんと勉強し、
「理解する方法」「習得する方法」を身につけておけば、
後々凄く有利です。