生きる技術は名作に学べ

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)

生きる技術は名作に学べ (ソフトバンク新書)

 文化系トークラジオライフの予習に、伊藤聡さんの『生きる技術は名作に学べ』を読む。

 しかしこれは、驚くべき本だ。

 たとえば、マーク・トゥエイン『ハックリベリイ・フィンの冒険』を論じた章では、「いきなりだが、わたしはトム・ソーヤみたいな子どもがきらいだ」なんて文章が出てくる。

 なぜなら狡知に長けたハックは、学校では人気者で、やがて社会に出たら成功する大人になるだろう、まさに優等生的な存在であり、そんな存在に「憧れていた(かどうかは分からないが。ルサンチマン?)」著者にとって、ハックは許せない存在なのである。

 「生きる技術」関連の書物で語られる「技術」のほとんどが、タフでマッチョに世の中を生き抜く技術か、または権謀術数、狡知に長けた考え方で複雑な世の中を上手にわたっていく技術を教えてくれるのに対し、この本はまるで違う。そんな「生きる技術」は、むしろ実践させるほうがまれであり、それを実践する人を羨み、妬み、嫉妬する人生こそ、多くの人が過ごすであろう人生であることを知っている。

 うっかり「自己啓発本」だと思って購入すると痛い目にあう。

 これは、生き方をこじらせた文化系の人間が、その人生を客観視するために書かれた文章だ。