人生観を変える本を教えてください」と言われて

 「人生観を変える本を教えてください」と言われて思い浮かべたのは以下の本。

 『闇金融ウシジマくん』

 

 もちろんこの質問に対して、「まじめに」答えることは可能だろう。
 例えば、フーコーの『監獄の誕生』を読んで、日常に潜む権力に気づいた、であるとか。
 高橋源一郎の『さようなら、ギャングたち』を読んで、言語によって言語を解体することのスリルを楽しんだ、とか。
 あるいは、バイヤールの『読んでない本について堂々と語る方法』を読み、「読まない」ことのなんと知的であることか!ということに気づいたり。

 しかし、自分の興味関心を一切捨てて、それでも現在の大学生に読ませるべき本は何かと問われれば、私は『闇金融ウシジマくん』だと思うのだ。

 ウシジマくんの独特の職業倫理は、入社3年目の私に大きな影響を与えた。
 「3年目」という結果を求められるようになった年に、ウシジマくんの世界観を身に付けることができたことは、大きな収穫であった。

 私が考えるウシジマくんの職業倫理とは、「金貸し」であるということは、「借りる側」が幸せになろうがなるまいが、「金を貸し、金を返してもらう」という姿勢を、どんな顧客に対しても徹底することである。

 その徹底振りは、どれだけ「不幸な」人間に対しても変わらない。
 なぜなら、それが「金融屋」としてのウシジマくんの倫理だからだ。

 どれだけの不幸が先に待っていたとしても、ウシジマくんは金を貸す。そして、それを取り立てる。

 「貸して、返してもらう」
 それだけの作業を徹底的に突き詰めたときに、さまざまなドラマが生まれる。

 そのドラマは間違いなく、ウシジマくんの倫理から生じる何ものかである。