「Sugar High」再び

Sugar High (初回限定盤)

Sugar High (初回限定盤)

「Sugar High」を、最近聴き直しています。

このアルバムは、僕が浪人生をしていたときに、繰り返し聴いていたアルバムです。


なぜ「この」アルバムを、「いま」聴き直しているのか?

「Insomnia」と「This Armor」は、わかりやすすぎるくらいに傑作でした。(そうですよね?)

それに対して、「Sugar High」に対する評価は、あまりよくありません。

周りの人たちに聴いても、「あのアルバムは、なんかやばい」という人がいます。


その「やばさ」とは、何なのか?

恐らくそれは、曲調でしょう。

全体的に、暗い。

一つとして、明るくなったり、楽しくなったりする曲がありません。

それは、暗闇に灯る、一筋の蝋燭のような、微量な光であれこそすれ、

世界全体に対して、あまねく光を行き届かせようという意志が、感じられません。

これを「普通の人」が聴いたら、「なんじゃこりゃ」となるのでしょうね。


この頃から鬼束ちひろは、範囲を狭く限定するようになったのではないでしょうか?

ファーストアルバムが売れ、順調に進んでいた歌手生活が、

「Infection」を巡る活動自粛、それと、

もともとが、世間の常識とは外れたメンタリティーの持ち主だったはずが、

世間に同調して曲を作らねばならなくなったことに対する、極度のストレス。


そうした環境下で、鬼束さんのとった(取らざるを得なかった)戦略とは、

自分の顔の見える聴衆に対して、自分の音楽を語りかけることではないでしょうか。


今聴いていても、とても暖かい。

僕には、そう感じる。

しかしそれは、僕自身を、つつみ込んでくれるような暖かさとは違い、

同じつらさを共有しているような感覚なのです。