「Sugar High」再び
- アーティスト: 鬼束ちひろ
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2002/12/18
- メディア: CD
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「Sugar High」を、最近聴き直しています。
このアルバムは、僕が浪人生をしていたときに、繰り返し聴いていたアルバムです。
なぜ「この」アルバムを、「いま」聴き直しているのか?
「Insomnia」と「This Armor」は、わかりやすすぎるくらいに傑作でした。(そうですよね?)
それに対して、「Sugar High」に対する評価は、あまりよくありません。
周りの人たちに聴いても、「あのアルバムは、なんかやばい」という人がいます。
その「やばさ」とは、何なのか?
恐らくそれは、曲調でしょう。
全体的に、暗い。
一つとして、明るくなったり、楽しくなったりする曲がありません。
それは、暗闇に灯る、一筋の蝋燭のような、微量な光であれこそすれ、
世界全体に対して、あまねく光を行き届かせようという意志が、感じられません。
これを「普通の人」が聴いたら、「なんじゃこりゃ」となるのでしょうね。
この頃から鬼束ちひろは、範囲を狭く限定するようになったのではないでしょうか?
ファーストアルバムが売れ、順調に進んでいた歌手生活が、
「Infection」を巡る活動自粛、それと、
もともとが、世間の常識とは外れたメンタリティーの持ち主だったはずが、
世間に同調して曲を作らねばならなくなったことに対する、極度のストレス。
そうした環境下で、鬼束さんのとった(取らざるを得なかった)戦略とは、
自分の顔の見える聴衆に対して、自分の音楽を語りかけることではないでしょうか。
今聴いていても、とても暖かい。
僕には、そう感じる。
しかしそれは、僕自身を、つつみ込んでくれるような暖かさとは違い、
同じつらさを共有しているような感覚なのです。